建築における仲人【分離発注での私の立場】

この秋、集中的にリフォーム工事をさせていただく小川村のO様邸。リフォームとはいえ、約1カ月間、みっちり設計打ち合わせをさせていただきました。築40年の既存住宅を、さて、どのくらい手を掛けるか、どのくらいお金をかけるか、そのあたりがポイントなのです。

床、壁、天井といった内装はそのほとんどが更新され、キッチンや浴室も生まれ変わります。また、ほとんど効いていない断熱材もそっくりやり替えて、高断熱住宅への変身=つまり省エネ住宅、温水パネルヒーター全館暖房+薪ストーブ、というあこがれの住空間を目指します。

延べ床面積64坪というかなり大規模な改修工事なので、当然予算的なものが問題になります。新築ならば解体費で300万程度かかると思われ、また64坪の新築木造住宅を坪50万としても3200万円です。一時的な引っ越しもしなければならず、4000万近くの予算が必要と思われます。

今回はその1/2の予算で、あと30年を安全に、快適に暮らせる住宅を目指します。

今回の工事の進め方も、分離発注形式としました。

「分離発注」、という言葉は、私たち設計に身を置くものたちからすると理想の形なのですが、一般的にはなじみがありません。家づくりのほとんどの発注形式は、「建築請負契約」、という手法で行われています。建築主は、ハウスメーカーや工務店に設計と工事を一括して発注し、請負人=つまり〇〇ハウスや〇〇工務店が、各専門業者や職人に下請けとして発注する形態です。

私も以前は、〇〇ハウスに長年勤めていましたので、普通に建築請負契約の下、自社設計をして、自らが設計した建物を完成させるために、たくさんの専門業者に発注して、現場を運営していました。工務店側は、取引のある各専門業者に見積もりを取り、その金額に20%~30%を上乗せし、さらに会社経費(従業員給料や社屋の家賃…その他もろもろ)を上乗せし、お客様にお見積書として提示しています。設計料は全体予算に含む、といったこともしばしば。この場合の最大のメリットは、責任の所在がはっきりしていること。(それでも建築途中で倒産し、返金されないこともある)デメリットは、大工さんや電気屋さんなど、実際に手を動かしてその家をつくる人の顔が見えない、予算が不明瞭(どのくらいのお金が実際に職人の手に渡っているか不明=工務店・メーカー側が、どのくらい利益をとっているか?)そして、構造的にどうしても施主VS.建築屋、という構造になってしまうということだと思っています。

分離発注とは、オープンシステムとも呼ばれますが、とにかく、施主が自ら家をつくる、ということです。かつては地元に専門の職人(業者)が軒をならべ、大工棟梁は〇〇さん、屋根なら〇〇さん、材木は〇〇さんのところに、など代々続く家は、お抱えの職人がそろっていた、と聞きます。家長である旦那さんが、お気に入りの職人に、直接注文し、棟梁がそのまとめ役をしていた。その地の里山から木を伐り取り、製材屋が製材し、長期間乾燥させ、晴れて建て方の時には施主はもちろん、近所の人たちや、兄弟や親戚など総出で作業をしたそうです。旦那方式とも呼ばれています。つい数十年前まではそれが当たり前の家づくりであったわけです。

 

現在の家づくりに関する手法や情報量は、構造計算や設計手法も多様化し、設備もさまざまです。建築主が一生懸命に勉強して答えを導きだせるレベルではありません。そこで設計士という職業の人間が、自ら得てきたノウハウや考え方を施主にアドバイスし、いわば仲人として動き、各専門業者・職人へ働きかける。そして施主が直接その職人に発注する、とそんなことができないものでしょうか?施主が、友達のAに水道工事をやってもらいたい、知り合いのBから木材をかってもらいたい、というのも当然ですが、アリです。

家づくりは、そこに暮らす人が、もちろん主役です。なにせそこに何十年も住み続けなければならないのですから。納得のいかない家づくりでなくてはなりません。真に納得のいく家に住みたいのなら、自分でつくること。これが分離発注形式の原点です。

前置きが長くなりましたが、小川村Oさまにもこの考え方をご理解いただき、実行していただいています。ありがとうございます。

そして、実は多くの職人がそれを望んでいること。意外とこのことが知られていません。職人は当然ながら施主に喜んでもらえることを最大に望んでいます。請負形式ですと、職人は施主にあいさつこそしますが、それ以上の工事内容のことや、お金のことはタブーなのです。



本日、大工の棟梁の鍋内さんと施主のOさんが弊社にて正式にご契約。つまり結婚みたいなものです。(笑)

注文金額や支払い条件なども直接話し合って取り決めます。大工は正確に精一杯工事をOさんのために、手を動かす。施主はそれに見合う対価を支払う。ただそれだけなのです。

 



そして今回の工事の要である、断熱・暖房・換気工事などを担当する信越ビーアイビーの国分さんとも。

一つ一つを確認していきます。

 

 

 

私はと言えば、仲人らしく、お互いが率直に意見交換できるように、工事の内容が分りやすいように、お手伝いをするのみです。もちろん図面までは当然描きましたよ。設計図は工事がスムーズに進むための必須アイテムですからね。

 



それでも今回の基本的な図面を敷き並べると、このくらいにはなりました。

新築の場合はこの倍程度にはなります。

 

 

 



リフォーム前の、既存の平面図。

 

 

 

 

 



仕上げ表。各部位ごと、各部屋ごとどのような素材のもので仕上げるかを示します。改修工事をする場所、手を付けないところも分りやすく示します。

 

 

 

 



平面図。A3の用紙に1/50の縮尺で入りきらない・・・。相当でっかいお宅です。1/60になりました。

 

 

 

 



立面図。

 

 

 

 

 



電気配線図。

照明やスイッチ、コンセント、テレビ、電話の配線のことも当然いろいろとありますものね。

 

 

 



家具など重要な部分の展開図。

実際にこの図面を見て造作家具をつくります。

 

 

 

 



スプレーのりを使って、製本とします。

A4サイズになり、持ち運びも楽々。

工事中は毎日のように見ますので、工事が終わる頃にはボロボロに・・・。

 

 

 



工程表も当然お示しします。

工事が予定通りに進むためには、各業者が動きやすいように工程表が必須です。

 

 

 

 



自分で言うのもなんですが、私、図面を描くスピードは天下一だと思っています。

お客様との打ち合わせが9割で、それを図面化するのは1割程度です。そして徹夜近くで一気にワァ~っと集中的に。それがミスなく、早く描くコツだと思っています。

 

いよいよ工事が始まります。工事工程は、こまめに情報をアップしていきます。乞うご期待。

 

現地調査~調査企画業務

「築40年ほどになるらしい建物を、リフォームするか建て替えるかどうか迷っている友人がいるので、一度見てもらえないだろうか?」そんなご相談をいただいたのが5月。ガス工事の取引先であり、我が家にガスを供給してくれているエナジー内山社長からの紹介でした。

内山さんとはかれこれ10年以上の付き合いで、これまでも公私共にいろいろとお世話になっています。何でも彼は、全国でも屈指のジェットスキーの名手だったとか。確かにかっこいい体つきで、腹も出てません(笑)くやしぃ~~!

5月の下旬に、内山さんと共に小川村へ。初めてOさんとお会いし、現地の調査をしました。

小川村の農村部に位置するO様邸は、現在母親が1人で住んでいます。父上は数年前に他界。今回の施主であるOさんは長男ですが、兄弟は、みな家を出てしまっています。



図面が全く残っていないとのことで、各部屋を見ながら、まずは図面起こしからです。2階にはお母さんの趣味ということでアトリエがありました。

ここで一人静かに絵を描くことが、きっとお母さんにとっては至福のひと時なのでしょう。

 

 



2階は昔、養蚕をしていましたが、10年ほど前にリフォームを実施ズミ。非常にきれいです。その時はまだ父上も生きていたはず。

使わない2階をなぜリフォームしたのか?

 

 



現在、使わない2階は、たまに帰省するOさんの子供たちが遊ぶ場所になっています。

亡くなったお父さんも、孫たちともっともっと遊びたかったでしょうに・・・。

 

 

 



2階リフォームの際、1階の一部を少し増築して、トイレや洗面を更新されていました。

ただサッシはアルミサッシでガラスもシングルガラス。暖房もないので、非常に冬はつらい、とのことです。断熱力が不足しているようです。パッと見はいいんですけどね・・・。

 

 

 

 



ただ、お風呂はその時に手を入れておらず、昔ながらのタイル壁&ステンレス浴槽。やはり寒い窓に冷たい床。換気扇もなく、熱環境的には厳しすぎる。

ユニットバスへの変更が希望です。

 

 

 

 

 



お風呂は今もなお、長府製の薪ボイラーを使用しています。この薪ボイラーのちょうど向こう側に浴槽があります。

 

 

 

 

 

 


北側には台所があります。それなりに広さはありますが、収納量が不足していること、日中でも電気をつけなければならないほど暗いこと、床がベコベコしており、なおかつ冬冷たいこと、などの問題があり、流し台もそろそろ寿命ということで、ここは全面的に改修する必要があります。

 

 


台所に続く茶の間が、お母さんのリビング兼用になっています。やはり収納量が不足しているようです。

仏壇、神棚、テレビ、小物収納ロッカー、その他いろいろな書類などがここに集められ、ここが生活の拠点であることがみてとれます。

 

 



10帖の和室(客間)と続き間の10帖の居間。合わせて20帖+8帖の広縁。広い!すばらしい!ただ耐震性には問題ありそうだと直感しました。

 

 

 

 



1間巾の広い広縁です。健康器具など、余り使われることのない品々の行き場になっています。ここがこの家では最も陽のあたる最良の場所です。

 

 

 

 



和室も和室らしく、ふすま絵、欄間が配され、ニッポンの木造建築そのものです。

このあたりは、この家を象徴するスペースなので、やみくもにリフォームするのではなく、”調和”を心がけたいところです。

 

 



広縁の床下です。基礎は独立基礎で、断熱材もなく、冬は外気温同等になってしまうと想像できます。

このように吹きっさらしの床は~1階が駐車場になっているような建物の場合もそうですが~直接冷たい風がビョウビョウと吹きっさらすので、とっても寒いのです。

 



そのような床が、家の北側や西側にところどころあります。基礎工事の費用を抑えるためにそうしたのでしょうが、これでは絶対に冬暖かい家にはなりません。

床が結露していたはずで、床材はもちろん、土台も腐れてしまっている可能性も高いです。腐っていれば白ありや黒アリによる被害も想定できてしまいます。

 

 

 



外観は、軒の出が深く取られており、軒裏や外壁材の状態はいいのですが、やはり南面がほぼ全面ガラスとなっており、地震時の倒壊が心配です。

 

 

 

 



畳を一部はがして、粗床をくり抜き、床下に潜りました。やはり断熱材は全く入っていません。また、地面も湿った土で、カビの臭いが充満しています。

 

 

 

 



床下に潜って、断熱材を入れることが出来ないほど、狭い空間です。やはり思い切って床を全面的に剥がす必要がありそうです。

 

 

 

 



給湯用でサンジュニアがありました。屋根上のパネルに水(不凍液)を送り、温まった湯を熱交換してお湯に換えるシステムです。これは使えますねぇ。予算が許せば、断熱材入りの壁・屋根で覆い、出口の湯をボイラーに直結して、更なる省エネ設備としたいところです。

 

 

 

 



現場での間取りメモ。あまり時間はかけられないので、間取りと建具(サッシや引き戸)の位置だけはしっかりと押さえ、あとは写真をたくさん撮って、事務所に持ち帰って図面を起こします。

 

 

 

 

 



数日後、手書きで起こした1/100の平面図。

 

 

 

 

 



また、現場調査の報告書として、メモ書きをまとめておきます。施主の希望や工事のポイントとなることを書き、建て主にも渡します。

 

 

 

 

 

 



さらに、粗っぽいのですが、予算付の改修メニューを示します。

考えられる改修工事メニューを列記し、優先順位を打ち合わせするためのものです。予算はこれまでの経験をもとに割り出した、ざくっとしたものですが、これがないと、スタートが切れません。

 

 



ここまでの作業は無料で行っています。

予算のこと、工事期間のこと、工事内容のことなどに目途が立ったところで、さらなる立案を行うため、「調査・企画業務委託契約書」を結びます。

今回は¥30.000でお願いしました。このお金は、ゆくゆく設計監理契約が結ばれた場合は、その設計費に充当されることになります。設計監理契約に至らなければ、¥30.000を領収させてください、というものです。費用をいただく以上、きちんとした精度の高い調査が出来ますし、企画を練る作業にも本腰が入ります。建築主にとっても、設計者の実力や考え方、相性なども最小限リスクで判別できると思います。設計契約あるいは建築請負契約にいきなり踏み込むよりは、建築主側はもちろん設計者側も、双方にとってメリットがあると考えています。

 



先週、設計監理契約をしていただきました。今日は基本設計の第①回打ち合わせでした。

当社オリジナルの打ち合わせシート(全7回)に準じて打ち合わせを進めていきます。

 

 



今回はライフラインのことや間取りのことが中心でしたが、O様からいろいろな意見やアイデアの提案があり、2時間余りでしたが、いい打ち合わせが出来ました。

 

 

 



工事着工まで日がありませんので、住みながら改修の肝である、工事ゾーン分けと工事日程の大まかな説明を加えました。

O様ご家族にも、片づけや不用品の処分、整理などご協力していただかなくてはなりません。

 

 



細かい工種別の工程表を渡すよりも、ゾーンを色別して、カレンダーに分りやすく示すことがいいのだと思います。

浴室が使えないのはいつからいつまでか。キッチンが使いえない間は、どうするかなど、住みながら改修工事ならではの打ち合わせもたくさんあります。

 

 

今回調査をさせていただいた折、お母様にも、現状で困っていること、直してほしい所などをヒアリングさせていただきました。その際に、この家を亡き夫と共につくったこと。お二人で山から木を伐りだしてそれを柱に使ったこと。お二人で土壁を塗る作業をやり切ったこと。そして、

「要望は別にありません。おとうさんと一緒に、自分たちでつくったからな」、とおっしゃいました。

その時のお母さんの顔が、とっても印象的でした。いい顔してたなぁ。

築40年のOさま邸。40歳の長男とその家族が来春からここで暮らします。ウソのない、価値ある工事になるよう、気持ちを込めてお手伝いさせていただきます。

現地調査を終え、代々伝わっているであろう奈良漬をいただきました。ちょとしょっぱかったけど、深い味わいの優しい味でした。

ここで暮らしてゆく、という覚悟がにじみ出た表情のO様ご夫婦と、無邪気な3兄弟、そして40年間、この土地を守り続けてきた母親に見送られながら、小川村を後にしました。

「また来ます!」

 

築40年住宅・大規模改修、決行!

5月、6月と現地調査・ヒアリングをし検討を進めてきた長野県小川村の大規模改修工事。

今年の秋に工事を開始する旨で設計監理契約を締結していただきました。今回O様の改修の動機は、来年4月より転勤になりそうということで、これまで母親1人が住む実家に、夫婦・子供3人で同居を検討。水廻り(キッチン、浴室)のリフォームにとどめるのか、はたまた断熱改修へ踏み切るか、耐震補強は?間取りの更新は?増築は?などなど様々なメニューのご相談をいただきました。

このようなケースの場合、まず、現状での躯体や床下・小屋裏・基礎の状況を目視観察し、耐震壁の配置バランスや、将来的にどのくらいの年数を見込むか、また住みながら工事をするのか、改修の手順や方法、コストのコントロールなど、まあ、新築の住宅を建てる際に比べて、設計者は数倍のエネルギーが必要ですし、経験や予測が非常に大切です。

見た目を良くするだけのリフォームであれば、誰もができるのでしょうが、きちんとした断熱改修工事を含む場合は、工事をする側も、そこに暮らす人の側も、信頼・協力体勢なしには成し遂げられません。時間も相当かかります。建築業者側も必然的に、解体して新築を勧めるようです。

今回、私の調査によると、①まだまだ躯体がしっかりしていること。②基礎も健全であり、あと30年の耐久性は見込めそうだということ。③母親が亡き夫と共に苦労をしながらつくり、子供を育て上げたこの住まいに、とても愛着があること。などの理由により、解体はせずに、向こう30年、冬暖かく夏涼しい省エネ住宅を提案させていただきました。

建てた当時の図面が残っていませんでしたので、まずは、既存の図面を簡単におこしました。そして、現状での問題点を整理しています。

以下5月の現地調査後にブログでも紹介したものです。

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簡単にではありますが、改修のポイントを提案しています。寒い信州ですから、暖房の提案も盛り込みました。温水パネルヒーターにより全館暖房と、薪ストーブによる2種を提案。その他、断熱のことやサッシの交換・内窓設置、そして間取りの更新などについてもお示しさせていただきました。当然予算のこともアバウトですが、改修メニューごとに目安となる金額をお示しさせていただきました。

やるやらないは当然今後のお打合せになろうかと思いますが、全力で取り組み、いろいろな方(職人さんを含め)の協力を集合させねばできない大事業であることは間違いありません。

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現地調査に立ち会ってもらった鍋内大工さん、断熱・暖房工事を担当していただく信越ビーアイビー国分さんを中心に、O様ご家族が笑顔でお住まいいただける省エネ住宅に仕立てて参ります。今後このHPで、設計プロセスや工事詳細プロセスもタイムリーに行って参りますので、ご期待いただければ幸いです。コメントも受付中です。設計や工事内容についてご意見をお聞かせください。

現在~8/12 基本設計

8/13~8/26 実施設計

8/27~12/9 工事期間